ファンドの運用(過去2年)の振り返り

2021年8月10日に、エニグマ1号ファンド(以下「当ファンド」または単に「ファンド」)の運用を開始してから7月末で約2年が経過しました。このタイミングを1つの節目として、直近2年間(2021年8月10日~2023年7月31日、以下同様の意味で使用)のファンドの運用を振り返ります。

運用実績の振り返り

当ファンドの直近2年の運用実績は、図表1の通り、ファンド費用控除後で累積リターン27.82%(年率リターン13.06%)、シャープ・レシオ1.33となりました。

代表的な市場ベンチマークである配当込みTOPIXよりも低いリスクで高いリターンをあげたことが確認できます。また、当ファンドのリターンとインデックス(日経225(日経平均株価)、TOPIX)のリターンの相関が共に0.3未満であり、これは日本の株式市場全体のトレンドとほぼ関係無く、独自のリターンを実現したと言えます。

図表1. 直近2年のファンドの運用実績(配当込みTOPIXとの比較)

運用戦略の振り返り

以降、ファンドの運用戦略がどのように機能したかについて振り返るため、冒頭に改めて運用戦略を記載します。

当ファンドは、重要なマクロイベントが発生した際、機械学習モデルによる売買判定に基づき、日経225先物のポジション(買い持ち/売り持ち)を切り替える運用戦略をとっています(買いか売りかを判定するモデルを、以降「リターンモデル」と記載)。また同時に、マクロイベントを基に理論価格レンジを算出します(理論価格レンジを算出するモデルを、以下「水準モデル」と記載)。リターンモデルと水準モデルを用いて、レバレッジを+1倍~-1倍(ファンドの運用資産と同額の日経225先物の買い持ち~ファンドの運用資産と同額の日経225先物の売り持ち)の範囲で運用することでリスクを管理しています(詳細は当ファンドのコンセプト及び運用戦略の詳細を参照)。

図表2は、直近2年のファンドのポジションの推移を示しています。緑色の区間では買い持ち、赤色の区間では売り持ちのポジションをとったことを表します。なお、緑色と赤色のグラフの高さが変化する点はレバレッジの縮小/拡大を意味しています。

図表2. ポジション及びレバレッジの推移

買い持ちと売り持ちの期間を数値化すると、図表3の通り、その割合は概ね半々でした。当ファンドと日経平均株価やTOPIXとの相関が低い(株式市場全体のトレンドとほぼ関係無く、独自のリターンを実現している)点は図表1で確認しましたが、これは買い持ちのポジションだけでなく、同程度の期間、売り持ちのポジションをとっていたことが背景にあります。

図表4は、買い持ちと売り持ちの期間をより詳細にレバレッジ別に示したものです。 買い持ち/売り持ちいずれの場合も、概ね半分程度の期間はレバレッジを下げて(ポジションを縮小して)リスクを抑制していたことが確認できます。

図表3. ポジションの期間割合

図表4. ポジションの期間割合(レバレッジ別内訳)

図表5では、マクロイベントが発生した際のリターンモデルによる売買判定と、次のマクロイベントが発生するまでの日経225先物の実際の価格変動の方向が一致した場合を”一致”、一致しなかった場合を”不一致”としてカウントすると、直近2年のリターンモデルの売買判定の正解率は53.5%であったことが確認できます。

また、”不一致”の場合であっても、ポジションを縮小していた区間では損失を小さく抑えられたことを意味するため、方向の一致/不一致にポジションの大きさ(レバレッジ)を加味した正解率なるものを参考までに計算すると、図表6の通り、61.3%となりました。この結果から、水準モデルによるリスク管理もある程度機能することで正解率を押し上げたことが確認できます。

図表5. 売買判定の正解率(リターンモデル)

図表6. 【参考】売買判定の正解率(水準モデル考慮後)

総括と今後に向けて

この2年間のファンド運用の総括は以下の通りとなります。
・代表的な市場ベンチマークである配当込み株価指数(配当込みTOPIX)よりも低いリスクで高いリターン(高いシャープレシオ)を実現することができた。
・日本の株式市場全体のトレンドとほぼ関係無く、独自のリターンを実現することができた。これは買い持ちのポジションだけでなく、同程度の期間売り持ちのポジションをとっていたことが背景にあると考えられる。
・リターンモデルの売買判定の正解率は53.5%であった。更に、水準モデルによるリスク管理もある程度機能したことで、実質的な正解率を押し上げることができた。

今後も、この2年間の仮説・検証結果の反映、及びデータベースの更なる充足等を通じて、リターンモデル・水準モデルの精度向上を図ります。併せて、過去の検証結果を踏まえたレバレッジをより柔軟に変動させたリスク管理をおこなうことで、更なるファンドのパフォーマンス向上を目指します。